恐らく稲川淳二番組の見すぎ。

JR東日本を利用すると、偶に奇怪な行動を取る人間の姿を眼にする。
満員電車であるのに暴れ始めるのだ。奇声を上げながら。
とても筆舌し難い声を上げるのだが、「A"H"H"E"E"IIII"""II」
やはり書いた後に難度が高すぎると思った。筆者には無理である。
兎に角、そんなクトゥルフ神話の怪物を彷彿とさせる声の持ち主は
周りの人間が半径1メートルの奇妙な空間を作ると落ち着くのだ。
しかも周りの人間は"それ"に全く気にする様子も無い。
まるであって、元から存在しないかのような扱いである。
過去に詐欺師として一世を風靡し、RagnarokOnlineというMMORPG上で
熱烈な信者を獲得した麻雀用語のようなネーミングの方のサイトにて
「満員電車内で手製の新聞紙を広げ、しかも記事にその男の顔写真が
張られていた」という一節を思い浮かべてしまった。
要するに、この男も一般人も存在はしているが、互いに認識が出来ない。
そういった事なのだ。では認識も存在も確信している自分は何なのか。
不意に筆者の背中に寒気が走る。何とも表現し難い悪寒だ。
世の方々は例えば、幽霊という存在を知ってはいるが殆どの人がその
存在を認識することは出来ない。唯一欠片たる心霊写真やポルターガ
イスト現象等で二次的に認識しているに過ぎない。
つまり、筆者はこの目の前の存在を認識する能力があるということだ。
この鼻水を人差し指と親指で楽しげに捏ね繰り回し、舌を猛烈な速さ
で唇を嘗め回す都市伝説顔負けのクリーチャーを拝めるということは。
正直願い下げだ。このままでは発狂してしまう。
ふと身体が痙攣を起こす。どうやら座席で眠っていたらしい。
安泰の思いで居ると、突然ドアを叩きつける音が車内に鳴り響く。
恐る恐るその音がする方向を目線をやると、見覚えのある背中が。